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2011/10/07.Fri

モテキ ~恋など攻めてこない、ちょっと変わった純愛映画~

 「モテキ」の原点である漫画を、私は一度も読んだことがありません。テレビ東京のドラマも見ていません。ストーリーにまったく興味が湧かなかったからです。それでもなお、この映画が封切られるのを首を長くして待っていました。それはひとえに、「世界の中心で、愛をさけぶ」の森山未來さんと長澤まさみさんのカップルを、7年ぶりにスクリーンで観られるからです。この7年間に、2人は大スターになりました。森山さんは、どちらかというと舞台を中心に、その才能にますます磨きがかかっています。長澤さんは残念ながら良い作品に恵まれず、演技もワンパターンに陥って伸び悩んでいるように感じていました。最近は、その殻を破ろうとしているかのように、次々と大胆な役に旺盛にチャレンジしておられますが、先日観た「岳」でも、あまりに非現実的で空振りでした。いつも、次こそはという期待で観ています。
 
さて本作品のストーリーは、原作者が「その1年後」という設定で、新たに書き下ろしたものです。サブカルチャーが好きな30過ぎのちょいオタクが主人公ですし、漫画やドラマのあらすじを読んで、「とてもついていけないかも」と心配したのですが、全くの杞憂でした。私のような「モテキ初心者」でも、十分に楽しめるように作られています。挿入歌がたくさんあり、ミュージカル仕立てのシーンもあります。そういうのが大好きな私にとっては大歓迎ですが、この種の映画が嫌いな人にはちょっと抵抗があるかもしれません。それでもやっぱり、Perfumeの歌に合わせて森山さんが踊るシーンは圧巻です。小さい頃からダンスに親しんでこられた彼ならではのシーンかもしれません。実年齢よりかなり年上となる役を難なくこなしているところも凄いものです。
 
長澤まさみさんも素晴らしかったです。いつもながら明るさ一杯の最高の笑顔でした。課題であったろう泣くシーンも含めて、最近の作品では一番良い仕事をされたのではないかと思います。色々なところで取り上げられていますが、なるほど思わず息を呑むほどの美脚です。巨乳はわかっていても、こちらは今まで気づきませんでした。先日発売された雑誌「an・an」の「美脚・美尻特集」でも、存分にその姿を披露されているようです。シャイな私には買いづらいものがありますが。
 
映画の予告編を見て私は、オタクのしょうもない若者が4人の美女に同時に惚れられるバカバカしい話だと勘違いしていました。長澤まさみさんへは片思いでしたし、仲里依紗さんと絡むのは1泊2日だけ、真木よう子さんからはパワハラまがいに責められるだけです。本当に一方的に惚れられるのは麻生久美子さんただ1人です。森山さん演じる主人公は、全然モテ期でも何でもなくて、そしてやや年を食いすぎた感のあるオタクダメ男なのに、大きな目で見れば素朴な純愛を貫くのです。彼が経験する困難のひとつひとつは、いずれも「どこにでもありそうな」エピソードです。誇張はされていても、多くの人が「あるある」と思うのではないでしょうか?少なくとも私は、結婚するまでに似たような経験をいっぱい重ねてきました。自分にも遠い昔に多少のモテ期があったような気はしないでもないですが、それよりも主人公の心の中の葛藤の方が、ずっと愛おしく懐かしく思えました。
 
かなり異風な作品ですから、なかなか映画賞の候補にはなりづらいかもしれません。しかしそれでも、私にとって忘れられない作品の1つとなるでしょう。モテキファンの方はもちろん、まったくの初心者の方も、是非ご覧下さい。最近一番のオススメです。
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2011/10/03.Mon

神様のカルテ ~原作を読まないで見てはいけない~

 最近は色々と忙しくて、あまり小説を読んでいません。特に医療関係の小説は、どうも遠ざける傾向があります。細かいところが気になって、「それはちゃうやろ」と頻繁に思ってしまい、本題以外のところに興味がそれてしまうからです。ところがこの夏、「神様のカルテ」が素晴らしいと妻から強く薦められ、宮崎あおいさんで映画化されると聞いていたこともあって、なかばイヤイヤ読み始めました。ところが最初の数ページを読んだだけで面白くて夢中になり、北陸出稼ぎ出張の行き帰りを利用して急いで読み終えました。読んで本当に良かったです。最初から最後まで、楽しい笑いの連続でした。JRの車内で頻繁に吹き出すので、周囲の乗客から冷たい目で見られたほどです。本屋大賞第2位に輝き、シリーズ化されているのも納得です。
 この小説はさらに、とっても感動的です。特に、第二章の「門出の桜」が素晴らしい。満開の桜の中を歩く学士殿、描くのに疲れ果ててその場で眠り込んでしまったハルの姿が、そのまま頭の中で舞台の1シーンのように美しくイメージされます。舞台美術の担当者のような気持ちになってしまいました。間違いなく私の中で、「忘れられないシーン」ベスト10に入るのではないかと思います。

 さて、肝心の映画なのですが、ちょっとガッカリでした。3つの章からなる物語を、無理矢理ひとつのストーリーにまとめようとしたのが失敗でした。これは脚本の問題でしょう。一般向けの映画ですから仕方のない面もありますが、すごくありふれた、「大学医局に背を向けて地域医療に昼夜その身を捧げている若き医師と、大学病院から見捨てられた末期癌患者の、お涙ちょうだい物語」になってしまっています。これでは小説の良さの100分の1も伝わりません。せっかく桜井君がなかなか良い演技をしているのに(ネットなどでは責められていますが、私は彼にしては上出来だと思う)、そして宮崎あおいさんが完璧にそれを支えているのに、もったいない話です。
 私が感動した桜のシーンは、あの短い展開では、映画しか見ていない人にはまったく何もわからないでしょう。学士殿や男爵の人間像が十分に描かれた後でないと、その必然性が理解できないからです。また宮崎あおいさんが演じてくれたハルにしても、頻繁に世界の山々へ重いカメラを担いで登っている背景が描かれないと、あの映画ではただの写真好きのオネエチャンと大差ありません。「原作にはないエピソードを最後に入れた」と宣伝していましたが、そのしょうもなさにも呆れました。言われなければ気づかなかったほど、筋違いのどうでもよい話です。

 原作は現役医師の作品ですから、多少の誇張はあっても、「違うだろ、それは」と思うところは全くありません。そのあたりは通常の臨床医ではない海堂さんの作品とは違います(海堂さんのはミステリーだから余計に無理をしてしまうのでしょう)。しかし映画は、脚本家が素人だからでしょう、医療関係者から見れば違和感のあるシーンが満載です。いずれにせよ、最近数年間で一番感動した小説が、このようなガッカリ映画になってしまったことはとても残念です。でもまあ、役者さんたちはいずれも素晴らしい演技でした。タイゾーも何とか許容範囲内に収まっていました。「映画だけを観る」ことは絶対にお薦めしません。原作を読んで、気に入った方だけ、どうぞ。
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2011/07/22.Fri

大鹿村騒動記 ~原田芳雄さんを偲んで~

なでしこJAPANの優勝という嬉しいニュースの余韻にまだ浸っている時に、原田芳雄さんの死去という哀しい知らせが舞い込んできました。週刊誌のモノクログラビアで死期が近づいていることは知っていましたが、あまりにも早い知らせでした。まさに命がけだった映画の舞台挨拶の姿は、思い出しても涙が出てきます。

原田芳雄さんの死を悼む新聞記事には、どれもみな「アウトロー」の言葉があります。なるほどデビューの頃は、そういったワイルドな役柄が多かったでしょう。私は学生時代に「八月の濡れた砂」「赤い鳥逃げた」「祭りの準備」などを観ているのですが、恥ずかしながら主演女優さん目当てで観ていたので、あまり細かな記憶がありません。その後の代表作としていつも挙げられるのは「ツィゴイネルワイゼン」ですが、これはいわゆる典型的な「キネマ旬報映画」で、私には退屈すぎて最後まで観られませんでした。申し訳ありません。

彼が今のように幅広いファン層を得たのは、やはり中年以降、テレビや映画に引っ張りだこになってからでしょう。優しく見守る寡黙でクールな役柄が、おしゃべりで軽薄な私には憧れでした。「天国の本屋~恋火」がその典型でしょうし、「ブラックジャックによろしく」の心臓外科医役もドンピシャでした。最近では「不毛地帯」でバブル時代の大阪の商社社長、NHKのスペシャルドラマ「火の魚」では頑固でひねくれ者の作家と、まさに変幻自在でした。これほどまでに全く違う多彩な役柄を演じられる名優は、他に類をみないと思います。

さて「大鹿村騒動記」ですが、これはそもそも「いつかは原田芳雄さんを主役にして映画を撮りたい」という阪本順治監督の願いが実現した企画だそうです。原田芳雄さんの人徳でしょうか、信じがたいほどに名優が勢揃いして出演しています。三國連太郎さんを頂点に、高齢者から若手まで、そして分厚い中堅俳優陣がワキを固めています。これもまた、大好きな「下手くそが出ていない映画」です。テレビ会社がからんでいないのが良いのでしょうか?笑いどころを随所にちりばめて、夫婦の愛憎や友情、過疎化や性同一障害といった幅広いテーマを扱っていますが、やっぱり最大の見物は原田芳雄さんです。ずっと顔をドアップにしながらゆっくり振り返るシーンもあれば、メガネ無し・数種類の通常メガネ・サングラスのいずれの顔も見ることができます。でもやっぱり、彼にはサングラスが一番よく似合うような気がします。本当に残念ですが、彼の演技を映画やテレビでいっぱい観ることができたことに心から感謝したいと思います。合掌。

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2011/05/30.Mon

阪急電車

まずは映画以外のことで申し訳ありません。関西以外の方には阪急電車といってもぴんと来ないかもしれません。しかも片道15分の路線は宝塚線です。関西育ちである私でも、数回しか乗っていないと思います。逆瀬川には何度か降りましたが、これは30年くらい前、宝塚チボリという大きなプール園に行くためでした。それから門戸厄神は、私にとって特別な駅名です。京都の男子校生徒にとって憧れの的である神戸女学院があるからです。中学・高校時代は、この名前だけで興奮していました。コンクールで彼女たちのおそろいのワンピース姿をみた時には、鼻血がでそうでした。

さて映画ですが、ダントツ凄いというわけではないものの、最高品質に近い作品だと思います。ありえないようなエゲツナイ1つのエピソード(中谷美紀さんが白い花嫁ドレスで電車に乗る)に、多くのありふれたエピソードが見事に絡み合います。まさに巧みに紡ぎ上げられている感じが素晴らしい。嫁姑問題、DVのカップル、仲間はずれに会う小学生女児、贅沢なPTA仲間についていけない普通の主婦、などといった小話が、みんな少しずつ絡み合うのです。PTAのうるさいオバハンたちは、きっと神戸のひとではなく大阪のはずやろと思いますが、偏見かもしれません。

オバハンたちを叱る宮本信子さんが格好いいし、その長い時間をサイレントで流した演出も見事でした。ちょっと残念だったのは、オバハンたちの生け贄であった南果歩さんがイマイチだったことです。彼女はもっともっと上手でした。堤真一と共演したNHKドラマ「橋の上においでよ」が、今でも彼女の代表作だと私は思っています。

玉山鉄二さんも良かったです。頭の悪い社会人の役ですが、人間性のある暖かみが溢れ出ていました。本当に引き出しの多い役者さんです。「手紙」とか「帽子」のおかげでしょうか?最初に見た「天国の本屋」もよく覚えています。

私にとって一番好ましかったのは、勝地涼・谷村美月ペアです。勝地さんは、ほとんど脇役ばかりですが、映画にテレビに舞台に、大活躍されています。私は「幸福な食卓」の彼が、一番さわやかで好きです。今回はちょっと変わった軍事オタク学生の役ですが、なかなか似合っていました。また谷村さんは子役の時からずっと名女優だったのが、そのままうまく育った感じですね。素晴らしい。この映画ではもっとも得意なはまり役かもしれません。田舎から出てきたいわゆるダサイ女学生を、自然に演じておられました。私も40年近く前に大学に入ったとき、同じような女性がいっぱいいて驚いたのを思い出します。数ヶ月後も変わらない人はごく一部で、多くはびっくりするほど都会的に変わっていかれました。ちょっと寂しかったです。なお勝地涼・谷村美月が話す「グンオタ」とか「ヤソオタ」とかいう言葉が面白いのですが、「ゴンオタ」にはやられました。原作者か脚本家か知りませんが、絶賛です。どうかこの意味は、映画をご覧になって確かめて下さい。

最初の方は、関西弁がちょっと変で違和感を持ちながら見始めましたが、途中からは楽しくてたまりませんでした。本と役者が優れていれば、どんなCGや3Dも敵ではないことを実感させてくれる名品です。阪急電車になじみのない関西以外の方にも、是非見ていただきたいと思います。
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2011/05/30.Mon

ブラックスワン

これは簡単に言うと、バレリーナが役作りに苦労する話なのですが、自傷癖?や妄想が複雑にからみあい、少し難解な映画でもあります。本格的ではないにせよ、ちょこっとホラー風なので、見るのが大変でした。痛いシーンが出るたびに、私は目を覆って膝で防御態勢をとるし、隣で妻は悲鳴を上げるし、映画館が混み合っていたらひんしゅくを買ったかもしれません。

内容やストーリーは、取り立てて凄くありません。ただひたすら、ナタリーポートマンにつきます。彼女は身体を絞りあげて、異常な精神状態を演じきっています。最後になってついに披露されたブラックスワンのメイクや踊りには、バレエを全く知らない私でも感動します。一方で、白いドレスに身を包んで凜としている姿は、「ローマの休日」のオードリーヘプバーンを思い出させるほど美しかったです。この映画でナタリーポートマンは、アカデミー主演女優賞はじめ多くの賞に輝きましたが、当然のことと思います。とにかく彼女のためにだけある映画と言っても過言ではないでしょう。
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